あなたは何も変わらない [ひとり言]

sagi.jpg  あなたはそのままで美しい


今、私たちが生きている世界は、天災、環境破壊、飢え、不況、社会不安など様々な問題が起きています。

個人的なレベルでも、不況によって仕事を奪われたり、計画したローンが減俸によって払えなくなったり、リストラされたり、また仕事では上司からの叱責や嫌がらせ、同僚との不仲、隣人との揉め事。家族とは円満な関係を築けない。定年後の旦那がうっとうしい。
親戚の目が厳しい。

なんだか、綾小路きみまろの漫談みたいになってきましたが、毎日外来で耳にするストレスの原因は大半が人間関係の難しさ。

私のクリニックでは、心療内科を掲げているわけでも、人生相談をなりわいとしてるわけでもありませんが、こと体調不良の原因がストレスとなれば放ってはおけません。
次の患者さんをお待たせして、お話を聞くことになります。

時には、今にも噛みつきそうな恐ろしい形相をして診察室に入ってこられ、不定愁訴とも思える体調不良を訴えられるかたが時々おられます。
「なにか、ストレスに感じておられたり、気にかかるようなことはありませんか?」とお聞きすると、ますます恐ろしい形相になり、
「ストレスは何もありません!」と強い口調でお答えになります。
ゆっくり、内科的に診察、検査を終わった後、特に異常はなく機能的な体調の変化であることをお話して、再度、心の問題が体調不良に関わることがあることを時間をかけて説明すると、ぽつりぽつり、まるで蓋をして隠していた物を恐る恐るあけてみるかのごとく、これまでの経過と体調不良の一因と思われる様々な出来事を話し始められます。

余談になりますが、体調不良を絶対病気だ信じ切って、異常値が出るまで検査を要求したり、ドクターショッピングをされる方がおられます。
そうした交感神経バリバリ全開、ストレスいっぱいの方たちには、ご自分の交感神経緊張亢進状態を視覚的に見ていただくために、ホルター型心電図を利用して、心拍変動パターンなるものを解析します。(もちろん、大半の方が訴える動悸の原因精査が主目的です。)

心拍変動パターン解析というのは、生体や自然界のもつゆらぎ成分(1/fゆらぎなど)が、心臓の拍動にも存在し、そのゆらぎ成分をコンピュータで解析すると、交感神経と副交感神経の成分を分けることができます。

先ほどのストレス状態の方たちの大半に、睡眠中にもかかわらず副交感神経の成分の減弱や消失が見られます。文字通り、交感神経バリバリ全開、ストレスいっぱい状態が露呈してしまうわけです。ただし、中には本当にご自分で気づいておられないこともあります。

話が脱線してしまいましたが、さて、こうした交感神経バリバリ全開、ストレスいっぱい状態をどう解消したら良いのでしょうか。

以前、こうした状態を作っているのも、自分自身の選択であることをお話ししました。
そう、ストレスの原因もご自身の受け止め方次第だということです。
心理学の領域では、ストレスと感じている受け止め方の歪み、すなわち認知の歪みを変化させて、行動を変容させる認知行動療法が効果的です。
カウンセリングを受けながら、自分自身の受け止め方を変えていくストレスコーピングの方法などがありますが、詳しいことは精書に任せたいと思います。

特にパワーハラスメント、過重労働や、家庭内で様々な非難を浴びている人たちの共通点は、「つらい原因を作っているのは自分ではない。」「なぜ、自分だけがこれほどの目に遭わなければならないのか。」「逃げたくても逃げられない。」といった心理が働いています。
でも、本当にそうでしょうか?

「誰が何を言おうが、何が起ころうが、私は私。私自身は何も変わらない。」
「みんな、同じような境遇にさらされている。私だけじゃない。」
「やめたきゃやめればいい。生きる道はいくらでもある。」

と考えれば、行動も変わる。気持ちも変わる。
見る視点を変えればいい。つまり、フレームを変えれば良いのです。

肝心なことは、何が起ころうが、あなたの視点と行動が変わるだけで、あなた自身は何も変わらない、誰もあなたを変えることはできない。という事実に早く気づくことです。

先日、こんな方がお越しになりました。
「仕事で何をやっても、うまくいこうがいくまいが上司に一言、文句を言われてつらい思いをしている。もう、限界だから辞めたいと申し出たら、『こんなに忙しい時に辞めたいとは何事だ』と叱責され、辞めることもできない。人の顔を見ると小言ばかり言う。どうしたらいいかわからない。辞められるでしょうか。」

まさに、パワハラです。

私は、まずその方に、「家政婦のミタ」よろしく、

「それは、あなたが決めることです。」

続けて、
「辞める辞めないを決める権利は上司ではなくあなたにあります。本気で辞める気があればいつでも辞められますよ。辞めたら楽になるとお考えなら、決断されたらどうですか。」さらに、
「でもその前に一つ考えてみてください。上司の方があなたに小言を言い続ける、その心の内を想像してみてください。どんなだと思いますか?例えば、あなたが訳もなく誰かにあれこれ小言を言っている姿を想像してみてください。あなたの心の内はどんなですか?どうですか?そう考えてみると理不尽にあなたにパワハラをする理由は、あなたが原因でしょうか。そうではありませんね。その上司の心に中に原因があるのです。それが、理解できたらどうでしょう。その上司に向かって『さあ、好きなだけこぼしなさい。そんなにストレスがたまって嫌なことがあるなら、私がとことん聞いてあげますよ。』ぐらいの気持ちになりませんか?そう、原因はあなたでもないし、上司が何を言おうが、あなたはあなた。すてきなあなたは何も変わらない。何をしようが、何を決めようがあなたの自由ですよ。そうは思われませんか?」

お帰りになる時は、とても明るい顔をしていらっしゃいました。

suiren.jpg 周りが泥でもどう咲くかはあなた次第

世の中で、何が起ころうが、あなた自身があなたを変えない限り、誰もあなたを変えることはできません。「あの人が私をこんなにした。」ではないのです。あなたが、変えたのです。

周りの事象を、そしてあなた自身をじっと観察してみましょう。そして、時々観察する視点を変えてみましょう。事実がありありと見えてくることがあります。

何が起ころうが、あなたは何も変わらないのです。

act.jpg
あなたの価値はどう行動するかではなく、どうあり続けるかで決まる

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